第60回ロカルノ国際映画祭グランプリ受賞作映画『愛の予感』ティーチイン
スイスで開催された第60回ロカルノ国際映画祭コンペティション部門に出品され最高賞の金豹賞(グランプリ)を受賞した小林政広監督作品『愛の予感』の凱旋試写会が15日都内で行われ上映終了後には監督・脚本・主演を勤めた小林政広監督と本作主演の渡辺真起子さんによるティーチインが行われた。
『愛の予感』は14歳の少女が、同級生の少女を刺殺し、その加害者の母親と被害者の父親のその後を描いた物語で、CICAE賞(国際芸術映画評論連盟賞)、ヤング審査員賞、ダニエル・シュミット賞を受賞し、金豹賞を含め4冠を達成している。
ティーチインでは、ロカルノ映画祭の話を中心に展開された。
■ご挨拶■
小林監督「今回の映画はまったく(受賞する)自信が無くて、ロカルノ映画祭でかかる事が決定してから他の映画祭でも見てもらったのですが、テンポが遅いなどと言われ断られていたのです。ロカルノでは受け入れられたようでした。発表まで死んだような感じで過ごしていたので、まだ受賞した喜びというより驚いている状態が続いていますね。」
渡辺「ロカルノは滞在期間が長かったのでのんびり過ごせるかなと思っていたのですが、長い分だけ、気が張っていて身が削れる思いでした。」
■ティーチイン■
Q映画祭の公式上映前に行われたプレス向けの試写での評判が良かったとお聞きしたのですが、ご自信で受賞の予感はありましたか?
小林監督「プレスで受けてもだめな時はだめですし、(受賞する)予感は無かったですね。でも、ヨーロッパ中のプレスの方々は上映後これしかないと言ってくれていて、本当なのかなって思っていました(笑)」
Q、キャスティングはどういった経緯で決められたのですか?
小林監督「この作品自体が2年くらい前に書き上げた作品で、ある俳優さんにオファーをしていたのですが1年待ってくれと言われ待ったのですが、一年後あと一年待ってくれと言われたので自分でやろうと思いやることにしました。プロの俳優さんに言わせれば、台詞の無い芝居はとても怖いものらしく簡単には引き受ける事ができるものでは無いらしいです。相手役は、渡辺さんだったらやってくれるだろうと思ってオファーしました。」
Q、共演が小林監督ということもあり監督からのオファーに対してどう感じましたか?
渡辺「最初に本を読んで最後の方に本編にはないのですが絡みのシーンがあって、それを読んだときは本当?って思いましたけど(笑)・・・“撮らねばならないと”という監督の気持ちと一緒に作品を作るのは辛いかったけど、ど楽しかったです。やっぱりそういう気持ちの人とやるのって楽しんですよ。」
Q、繰り返し撮影したシーンの苦労話はありますか?
小林監督「サイレント映画のようなところに一度戻って作ってみたいなと思ってやりました。エモーションとかがうまく表せるんじゃないかなと思って8mmで撮るみたいな感じでやりたかったですね。」
■これから作品を観る観客の方々に伝えたいメッセージ■
小林監督「僕の作品はフィクションでインスピレーションを受けたものから自分で作っていくので、社会的なメッセージといったものは無いしドキュメンタリーと混同されると困る。映画として自分がどれ位納得できるか、昔の作品を越えることがということが自分にとって重要なんです。英語のタイトルに“the REBIRTH”としたのは、もう一回生きていくにはパッションが無いと生きていけなくて、生きていくっていうのは何かエネルギーを持たないといけないという意味を込めています。」
(Report:大野恵理)