2007年3月29日、銀座シネスイッチにて今夏公開予定『サイドカーに犬』の完成披露試写会・舞台挨拶が行われ、主演の竹内結子さん(以下竹内さん)と松本花奈ちゃん(以下花奈ちゃん)、そして根岸吉太郎監督(以下根岸監督)の3人が舞台挨拶を行った。

原作は芥川賞作家の長島有のデビュー作にして第92回文學界新人賞を受賞した同名作品で、根岸監督は原作の映画化について「素敵な女性が撮りたかった。(長島有のような)若い感覚に負けないよう作品を撮った。
映像化出来て幸せ。」と述べ、意欲的に映像化に望んだ事を伺わせた。

主人公の薫(松本花奈)が10歳の時に母親が家出し、突然家にやってきた父の愛人・ヨーコ(竹内結子)と過ごした忘れられない刺激的な夏休みの思い出を描いた本作であるが、この“ヨーコさん”はかなりの曲者で男勝りな女性。
これまでの竹内結子さんが演じてきた大人しくしおらしい女性とは全く逆のイメージである。

なぜヨーコ役に竹内結子さんをキャスティングしたのかという質問に対し、
「(強い女性である)“ヨーコ”が似合わない人が良かった。(これまでの竹内さんの)あの世からこの世に現れる役じゃなくて(笑)、真正面から「オスっ」と出てくる様ないい女(の竹内さん)を見たかった。」と、根岸監督はジョークを交えて答えた。

一方ヨーコを演じた竹内さんは演じる上で感じた事について、「監督と相談しながら“ヨーコ”を作り上げていって、女としてやってはいけない事が出来て気持ちよかった(笑)。」と笑顔で答え、「強い女性であるヨーコに対して抱いていた憧れは、演じていく上で一人でいるのも楽じゃないんだなという思いに変わった」と演じる上での心境の変化についても語った。

舞台挨拶の間、終始緊張した表情を浮かべていた、薫役の花奈ちゃんは、演じた薫と似ている部分はあるかという質問が投げかけられると、考えこみながらも「自分の意見を言わないところ」と素直(?)なコメントをし、会場が温かい笑いに包まれた。
「将来は個性的な女優になりたいんだよね?」という竹内さんの問いかけに対しては、花奈ちゃんは真っ直ぐ見上げて頷ずいていた。

現場では竹内さんが「お味噌汁を作ってくれておいしかった。」というエピソードを花奈ちゃんが話し、舞台に上がる時や写真撮影の際に竹内さんが優しく花奈ちゃんを見守る場面が多く見られ、和やかな現場の雰囲気が、二人の関係により伝わってきた。

映画の時代設定となった80年代について、80年生まれの竹内さんは「黒電話とか、チャンネルを回す古いテレビとか、シャツを裾部分で縛ったりとか、
靴下をくるくる丸めたりだとか…(笑)。」と一つ一つを思い出すのが楽しそうに語った。

また『サイドカーに犬』というタイトルにちなんだ“犬派”か“猫派”かという質問に対して、松本花奈は「犬派」、竹内結子は「猫派」と答えたが、竹内結子に「花奈ちゃんは意外と猫派になりそうな予感がする」と言われ、「猫派を目指したいです」と二人で目を合わせて笑いながら答えた。

時間の関係上、根岸監督がどちら派かを聞くことは出来なかったが、試写会後に出口付近に立ち、「ありがとうございます。宜しくお願いします。」
と見終わった観客に対して丁寧に声をかけている姿は“犬派”かなと思わせ、真面目な人柄が表れていた。

最後に映画について、
花奈ちゃん「いい映画なので観て下さい。お願いします。」
竹内さん「なんだかよくわからないけど、いい後味かする映画です。」
根岸監督「(映画を観て)いい夏休みを感じて欲しいです。」と語り、舞台挨拶は終了した。
今年、多くの人の忘れられない夏休みを作れる事を期待したい。
(結田友恵)