ルシール監督は「私はこの映画について多くを述べたくありません。理屈で突き詰めるよりも、ひたすら感じて欲しい映画なんです。」と初めに語った。映像から溢れる少女達の純粋無垢な魅力と、時間が止まったような不思議な場所を映し出した『エコール』。本作を撮ったルシール・アザリロヴィック監督がティーチインを行ないました。

Q:たくさんの少女が出ていますが、キャスティングはどのようにされたのですか?
A:「メカニックな演技をする子は避けたかったので、演技経験は特に問いませんでした。必要な条件の1つは自然に演じることができること。もう1つはダンスができること。ダンスに関しては上手くなくてもよかったんですが、ダンスをしている子はしなやかに体を動かせるので必要なことでした。もう1つ、キャスティングをする上で気をつけたのはグループ構成です。一人一人を個性的にするよう心がけ、小宇宙のような構成にしたんです。オーディションはせずに、ダンスをやっているところを見て話をしてみて、私の感覚的なもので決めました。リハーサルをほとんどせずにそのまますぐ撮影に入ったので、撮影中は悪夢のようでした(笑)。子供達を撮るというのは本当に難しかったです。でも結果的には素晴らしい作品になったと思っています。」

Q:原作は短編小説ですが、映画にする上でどのような点に気を使われましたか?
A:「私は原作の世界に惹かれたから映画を作ったんです。原作ありきだったので、特に何かを崩そうとは思いませんでした。短編での起承転結は感覚的になってはいますが、ちゃんと入れたつもりです。」

Q:イリスという少女の名前には何か意味があるのですか?
A:「ありません。少女の名前をつける時は、どこの国か特定できないような短い名前にしました。最初は全員花の名前にしようとしたんですが、複雑すぎたのでやめました。」

Q:鳥の声や森の音、歩く音などがとても印象的に使われていましたが、どのようにされたのですか?
A:「音には非常に気を使いましたね。室内の音や流れる音楽などは、子供が実際にあの場で聞いているもので、そこに存在しているものから出ている音を使うことにこだわりました。ロケ地は孤立した場所ではなかったのでテイクが難しかったです。ポストプロダクションで街頭の音や風の音を足したりしました。人間の声は全部あの場で発せられていたものです。」

Q:ご自身の子供時代を反映させたところはありますか?
A:「小説を読んだ時は不思議さと奇妙さを感じました。読んだ直後は気付かなかったんですが、ディーテールに自分を投影できる部分がありました。また、郊外に住んでいたこともあったので森で遊んだこともありましたし、子供達がしている遊びもやったことがありました。感情的に自伝的な要素を含んでいると言えるかもしれませんね。」

Q:子供に惹かれるのはなぜですか?
A:「子供というのは感情的に大人よりも強いものを持っているんです。世界に向けるベクトルが大きいのも興味深いですね。」

Q:足のショットが多いですよね?足が綺麗な子を選んだんですか?
A:「特に意識はしていませんが、ダンスをしている子は身体的に優雅なので結果的に足の美しい子たちが集まりました。また、ここにも自伝的なものがあるのですが、私は成長期に背が高くて足も長かったんです。だから当時のミニスカートからにょっきり出た足が私にとっては成長期を自覚する要素になっていたので、自然に足のショットが多くなったんです。」

Q:最後の方で”ギャスパーへ”と入れられてましたが、ギャスパーは作品に関わられたんですか?
A:「直接的には関わっていないです。でも間接的に、特にモンタージュに関しては有益な助言をくれました。一番最初にクレジットが出てきて昔の映画を思わせるようになっているんですが、ラストの方で男の子が出てきますよね。その後ギャスパーの名前を出すというのは私にとっては自然なことでした。あれは個人的なもので、彼に対する言葉です。」

最後に「センセーションとエモーションで観て欲しい映画です。男女で違ったアプローチをされると思いますが、純粋に、自由に観てください。この映画に真実というものはありません。あなたが見つけたものが真実です。」と語ってくれたルシール監督。
自分の目で『エコール』の中に何かを見つけてください。

(umemoto)