同名の大人気コミックを元に作られた、この夏最大級の感動作『花田少年史 幽霊と秘密のトンネル』。本作は一般公開に先がけ、15日からSKIP シティで開催されている「SKIPシティ 国際Dシネマ映画祭2006」でオープニング作品として上映された。
この映画は天才子役、須賀健太演じるわんぱく少年・花田一路のひと夏の不思議な体験を描いた作品。一路の家族や友達を巻き込みながら進むストーリーは観る者を飽きさせない冒険のよう。しかしそんな物語の根底にあるのは、私達が忘れてしまいがちな“家族の絆”や“大切な人を想うこと”なのだ。

本作には篠原涼子や西村雅彦、北村一輝や杉本哲太といった豪華俳優人が勢揃い!それぞれが個性的なキャラクターを演じているのもこの映画の魅力と言えるだろう。監督は多くのテレビ番組を手がけてきた水田伸生。なんと本作が水田監督デビュー作となっている。
今回はその水田監督とヒロインの幽霊を演じた安藤希にインタビューしました。

——撮影中にその場で編集されたそうですが、どういう風にされたんですか?
監督:「基本的にデジタル専用の機材でそのまま取り込んでしまうんですね。例えば下絵を合成する場合はその下絵のメモを持ってきてそのまま乗っけたりとかしましたね。あるいはサイズを変えて合成する時にはその場でアングルを確認しながらやりました。撮り直しも格段に減るし、テレビ育ちなのでかなり精度の高い機材に慣れているというのもあって、かなりやりやすかったですね。」

——では反対にデジタルでデメリットを感じられたことはありましたか?
監督:「ビデオの映像とは決定的な違いはありますし、それをどう感じるかだけじゃないでしょうか。同じ被写体でも映り方は違うことをわかった上でやりますから。それを映画の性質だとかいうところで使い分ければいいと思います。」

——スクリーンサイズをもっと広げてみようとは思わなかったんですか?
監督:「シナリオが求めているサイズがあると思うんです。やっぱりお芝居も撮影機材の選択も、スクリーンサイズも演出も脚本が望んでいることをやらない限りは全く意味がないと思うんですよね。それはシナリオの段階から感じていました。」

——今までいろいろなテレビ作品を手がけられてきましたが、テレビと映画とはやっぱり違いましたか?苦労などはありましたか?
監督:「お芝居をカメラで撮るという作業は同じなんですけど、ただ自分自身が映画を観る時のことを考えると集中度がまるで違うと思います。テレビではチャンネルを変えて欲しくないので気を引くようなことをしようとする傾向が強いのですが、映画ではそれは必要ないと思いましたね。苦労と言えば、CMがあると楽だな〜とは思いました(笑)。今回はわりとゆったりと徐々に物語が始まって一つのところを目指していくという感じでしたね。掴みを考えちゃうテレビ体質には気をつけました(笑)。結局123分という長さになってしまいましたが、実は最初は100分にしたかったんです。絵コンテまで作って撮っているところが大半なんですが、メディアラボさんが燃えてくれて。カットの長さが撮っている時よりも延びていったところが多かったんです。それにいわゆる撮影前のプランよりも実際に役者さんを通してみると、いろいろ浮かんでくるんですよ。結果としては思っている以上にお芝居のテンポのメリハリが効いたんじゃないかと思います。編集の方やプロデューサー、そして観てくださった方の素直な意見も聞いたりしてカットの長さを決めていきました。」

——今回安藤さんは合成されたシーンが多かったですよね。役者さんとの絡みはあまりなかったんですか?
安藤:「私のシーンはほとんど健太ありきというか、私が出るところには必ず健太もいるという感じだったんです。確かに合成のシーンもありますけど実際はそんなに多くはなかったです。広島でロケをしていた方が多かったんですよ。」

——須賀くんが「夏休みの間撮影した」と言ってましたが、現場では皆でワイワイという感じだったんですか?
安藤:「そうですね。ただ健太はホントに出ずっぱりだったので一緒に遊んだというよりは、撮影が終わった後に撮影に協力してくださった広島の現地の人達とワイワイしました(笑)。現地の方が食事を作ってくださったり、一緒にお酒を飲んだりというのがすごく多かったんです。」
監督:「現地の方にはホントによく協力していただきました。運動会のシーンだけで4日かかったんですよ(笑)。しかも土地柄湿度も高いし、とても暑かったんです。でもあそこは子供たちもご父兄の方も芝居じゃなかったですね。運動会を本当にやっているという感じで。あの壮太君と彼の父親が会うシーンでは背景だけ10倍速度のハイスピードで撮って、後はお芝居を合成しているんですね。撮影自体やっかいでした。」

——原作から飛び出してきたような須賀君ですが、ホントにやんちゃみたいですね。
監督:「そうなんですよ。初めて一緒にお仕事したんですけど、今まではナイーブな役や病弱な役を見ていたのでそういうイメージがそのままあったんですが、実際はとてつもなかったです(笑)。とにかく花田一路をやりたい、と言われました。つるっぱげになるんだよ?って言っても、大丈夫という返事が返ってきました。」

——原作はどれぐらい意識されたんですか?
監督:「別物とは考えていましたが、やっぱり原作を読んだ方も読んでない方もこの映画をご覧になるだろうということは考えました。そんなにかけ離れたことをやっても仕方ないし、原作をなぞっていくしかないとは思いましたね。」

——プレッシャーを感じていたそうですが。
監督:「6キロ痩せました(笑)。製作準備中にネット上で「花田少年史」が映画になるらしい、という書き込みを見たんですよ。実写映画で上手くいくはずがない、絶対上手くいかない、と書かれてました。キャスティングが発表された時もいろんなダメだしや意見が飛び交ってましたね。」

——安藤さんはそういった反応をプレッシャーに感じましたか?
安藤:「原作が大好きな人が結構周りにいたんですけど、映画オリジナルのキャラクターというのもあってプレッシャーというのは特になかったですね。原作も脚本も読んで、とりあえず作品の世界観だけ体に入れて。それで現場に行ったら健太も一路でいてくれて。後は健太と監督と周りの共演者の方に合わせて演じました。」

——安藤さんは個性的で印象に残るような役を演じられることが多いですね。
安藤:「自分でこうだ!と思ったものをしっかり持ちすぎて現場に入っちゃうと、思っていたのと違った、ということがあったりするんですね。今回の『花田少年史』をやっても漫画の世界観が入ったままで現場に入ると、あ、健太こうくるんだ!って思うこともありました。体で感じることの方がすごく多いので、毎回あまり考え込まないで現場に行きたいと思っています。頭でっかちにならない方がすんなり役もつかめるし、役自体を楽しめるというのが自分の中でだんだんわかってきたんです。」

——今後やってみたい役はありますか?
安藤:「割とお化けみたいな実在しないものを演じることがなぜか多くて(笑)。いろいろやれればいいなとは思ってますけど、日常生活を普通に楽しんでいるような同世代の役もやってみたいですね。」

——全てのキャラクターに個性があって、それぞれがおもしろいですよね。篠原さんが今までとは違ったタイプの役を演じられているのがとても印象的でした。
監督:「テレビの世界で西村さんや篠原さんと一緒にお仕事させていただく機会が多くて、それこそお芝居を拝見する以上に素顔を知っているんです。だからあらかじめ持っていらっしゃる部分をキャラクターに反映させたんですね。そうすれば映画『花田少年史』の中の寿枝さんになると思ったんです。でも今回は本当に一点の曇りもないキャスティングでしたね。ホントに妥協なしの理想通りなんです。」

——シリーズ化も考えていらっしゃるんですか?
「どんどん健太も大きくなりますからね。でもハリー・ポッターだって大きくなっていってるし(笑)。それを考えると大丈夫ですね(笑)。」

——監督とテレビのプロデューサーと、どちらが楽しいですか?
監督:「監督というのは一つに集中してできるところがいいですね。1年間続けて4番組やった時は病気にもなりました(笑)。」

——これから映画を観られる方にメッセージをお願いします。
安藤:「原作を読んでいてもいなくても、年齢や性別に関係なく共感できる部分があると思います。泣きどころも笑いどころもいっぱいあるし、楽しんでもらえればそれが一番幸せですね。」
監督:「映画というのは親子で同じテーマについて語り合える、かなり良い道具だと思います。年齢も置かれている環境も違うから、興味を持つ対象が違うというのは当たり前ですよね。それはどちらかが歩み寄らなければならないところだとも思うんですが、映画は一緒に観て、感じたことや意見を対等に話すことができる素敵なものなんです。たまには親が子供を誘って映画を観に行くのもいいと思うんですよ。遊園地とは違った楽しさがそこにはあるし、世代を超えて同じことを考えることができる。それにお互いの視点が違うことも再確認できる。ホントにいい道具だと思います。」

(umemoto)

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2006 公式HP
http://www.skipcity-dcf.jp/
花田少年史 幽霊と秘密のトンネル
http://www.hanada-shonen.com/