南米アルゼンチンの首都ブエノスアイレスに韓国から移住してきた人たちを描いた『オレのために泣くかアルゼンチンよ』のペ・ヨンソク監督が舞台挨拶とQ&Aを行った。
ヨンソク監督の父親は在日韓国人であり、亡くなったのも日本であるということで監督にとって日本は大事な国だという。本作は彼自身がアルゼンチンに移住してからの生活を元につくられた映画だそうだ。
「アルゼンチンにいる韓国人の移民はカナダやアメリカと比べると少ないです。アルゼンチンに移住した韓国人の子供は私も含め、1.5世だと言っています。映画を観てもらえればわかると思いますが、我々は青春期に苦労しました。その苦しい時代を記録し、周りの人やこれから育っていく人たちに見せたいと思ってこの映画を撮りました。映画を作って皆さんに観てもらい、同じ体験をしてもらうことで私の中にアイデンティティが少しずつできてきたように思います。実はこの映画に私の全財産をつぎ込んだので、今は一文無しなんです(笑)。」

Q:どれぐらいの期間で撮った作品なのですか?
ヨンソク:「最初は4ヶ月ぐらいの予定だったのですが、16ヶ月ぐらいかかってしまいました(笑)。アマチュアの俳優さん達に出てもらったので、撮影に飽きちゃった人がなかなか出てきてくれなくなったことがあったんです。編集は1人で出来ましたので、徹夜して1ヶ月半で仕上げました。」

Q:苦労されたことは何ですか?
ヨンソク:「一つにはなぜこの映画を作るのか?という疑問が自分の中にあったことです。それで一体何を得るんだろう?って思っていたんですね。大勢の人の前で服を脱ぐような気持ちでした。もう一つはサウンドの作業が難しかったことです。技術的なことを全部自分でやらなくてはいけなかったというのは厳しかったです。」

Q:韓国での反応はどうでしたか?
ヨンソク:「私がストーリーのある映像を撮ったのは、この作品が初めてでした。結婚式の様子をビデオカメラで撮る程度しかやったことがなかったんですよ(笑)。釜山映画祭で上映して頂いたのですが、韓国には移民を外国から受け入れる習慣はないですし、外国での移民の状況を知ることはあまりなかったので、衝撃的に受け取られる人が多かったです。」

Q:エンドロールの時に新聞記事の映像を入れられていましたが、あれはアルゼンチンの新聞なんですか?
ヨンソク:「アルゼンチンには韓国人の移民のコミュニティがあるんですが、それは彼ら独自で発行しているもので公けにはしないものなんですね。なるべく知られないようにしているので、ああいった出来事はアルゼンチンでは知られていません。だから映画祭に出す時には新聞記事を入れたままにしていいものか迷いました。」

Q:バイオリンを弾いている女の人はもしかして2世の方なんですか?
ヨンソク:「この映画には主人公が4人います。3人は1.5世代の人たちで、あまりよくない終わり方をしています。失敗してしまった人たち、あの地に定着できなかった人たちを象徴しているんです。でも私はなんとか希望を持たせたかった。だから2世である彼女を出し、曲を最後まで演奏させたのです。」

(umemoto)

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