中国映画史上初のキャラクター、風俗店に勤める女性リリが、会社が倒産し借金に追われる男ジアジュと出会い、ジアジュの親孝行に付き合うはめになる。リリとジアジュは赤の他人でありながら、「死ぬ前に、嫁が見たい。」という父親の願いを叶えるため、ジアジュの故郷へ向う、そこでふたりを待ち受けていた未来とは・・・。

「中国における伝統と現代の衝突を表現したかった。」と語るルゥ・シュエチャン監督。『ションヤンの酒家』にも出演し、日本でも人気女優であるリ・ジャーシュエンが自由奔放でありながらも純粋なリリを好演、そして本国中国でドラマなどに大活躍しているパン・ユエミンが、必死に体裁を守りながらリリに心を通わせていくジアジュを演じている。

Q:「福建省の田舎の風景にとても感銘を受けました。監督の故郷であったりするのですか?」
A(ルゥ・シュエチャン監督):「私は北京出身なので、直接関係のある場所ではないです。伝統と現代の差異を表すためにはかなり原始的な村が必要だと思っていたら、偶然映画の中で使った村が見つかったので、ラッキーでした。お茶を作っていた庭は大変有名な場所で、何百年も前からある場所なんです。そこにある道具も骨董品と言って差し支えのないようなものばかりでした。にもかかわらず、その場にある小道具をスタッフが壊してしまって、大きな損害賠償を払うという事件も勃発しました(笑)。」

Q:「リリがカードを差し出すシーンがとても印象的でした。」
A(ルゥ・シュエチャン監督):「その通りです。まさに伝統と現代を表したものです。」

Q:「この映画を撮ることになったきっかけを教えてください。」
A(ルゥ・シュエチャン監督)「この映画は私にとってふたつの挑戦を果たさせてくれました。ひとつは初めて風俗店に勤める女性を描いたこと、もうひとつは初のデジタル映画だということです。中国にももう200館以上のデジタル映画館がありますし、デジタル映画は今重要視されてきています。デジタル映画はコストも安く、製作・編集も簡単なので、今後もデジタル映画は力を持ってくると思います。ただ、フィルムに慣れ親しんできた出身としてはいつかフィルムの終末を見届けなければいけないと思うと、残念です。」

Q:「役作りで苦労したところを教えてください。」
A(リ・ジャーシュエン):「ロケで苦労を感じたことはなかったのですが、演じれば演じるほど心が苦しくなる役でした。」
A(パン・ユエミン)「監督とお仕事をさせていただくのは2回目です。大学時代は映画製作を研究していて、実習の時に初めてお会いしました。その時、俳優の道を志すようにアドバイスしていただいたのですが、僕はまだ駆け出しなのでよく怒られていました(笑)。『君は成長しないとだめだ、次回作は5年後だね。』と言われて、1ヶ月早まることも遅くなることもなくちょうど5年後にこの作品に出演できてよかったです。3回目は5年後よりも早く監督の次回作に出演したいです。」
A(ルゥ・シュエチャン監督)「彼は5年で飛躍的に進歩しました。父親が亡くなる前に彼がひとりで長台詞を話すシーンを入れようと思って、「そういうシーンを入れようと思ってるんだけど…。」と彼に話しました。「なにを話せばいいんですか?」と聞かれましたが、「自分で考えてください。」と言いました(笑)。そして彼はそのシーンをやってのけました。5年前にもふたりには恋人役で共演してもらいました。当時は現場で、幼稚園児のようにじゃれあっていたので、「いずれふたりで遊んでいるような恋愛物語をつくるよ。」と約束していました。そして、この作品で実現することができました。」

(ハヤシ カナコ)

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