赤いスクーターに乗って出奔する自閉症の女と、母親を殺してしまったその甥。それぞれ内面的な心の葛藤を抱え、外界とうまく通信できない二人が、肉親の死をきっかけに危険で凶暴な現実に飛び出してゆく様をセンシティブに描いた瀬々敬久監督『肌の隙間』。昨年暮れにピンク映画として公開された本作は、ピンク映画出身の瀬々監督にとって久々のピンクへの復帰作でもある本作。しかしピンク映画と聞いて尻込みしている女子に入門編としておすすめしたい、言われなければピンク映画であったことがわからないくらい、ナチュラルだし、逆にピンク映画だからこそ表現できた人間の根源に触れる世界が描かれる。5月28日の公開初日には、瀬々監督ほかキャストが一同に会し舞台挨拶を行った。

瀬々敬久監督「映画を観て楽しんで帰って欲しいですけど、多分楽しめないと思います。交通事故みたいな映画なんで(笑)。今回恩返しをしなければならない人が増えてしまいました。いつか返しますので…(とキャストに向かって一礼)。」
不二子「まだ観てないので、何とも言えないんですが噂ではかなりキツイ一時間半だということです。三日間くらい頭に残るそうです。どんよりして帰ってください。」
小谷健仁「撮影は初めてだったので、貴重な経験をさせてもらいました。共演者の方々とも楽しい時間を過ごすことができました。緊張して何をやったか覚えていないところもあるんですが、とにかく一生懸命やりました。」
三浦誠己「瀬々さんと楽屋で今日お会いしたとき、まだお酒は飲んでいなかったみたいなので安心しました(笑)。瀬々さんの作品には数回参加させていただいたんですが、熱のあるアツイ撮影現場でした。がんばってまた瀬々さんに呼んでいただけるように努力していこうと思っています。」
伊藤洋三郎「今回はアイスクリーム屋さんをやらせていただきました。瀬々さんとは初めてで、でもあまり現場でしゃべらない分、目の奥でもっとやれ!もっとやれ!と言われているようで、やっぱりヤバイ人だなって気がしました。」
飯島大介「最後の方に登場する一言もセリフがない女の人を追い掛け回すホームレスの男です。ホームレス役は初めてでしたが、感じるごとくやらせていただきました。楽しんで、…というか思いっきり目を開けてみてやってください。」

現在出演作『花と蛇2』も公開されている不二子は、本作が初主演作となった。「映画の話をいただいたときに、ピンク映画ってやったことなくてどうしようと思ってたら、瀬々さんいい監督だからやった方がいいよって色んな人にいわれて、それで出演したんですけど、現場で瀬々さんは何をいっているのかわからないことが多かったです。何かをいいたそうに大きな顔で汗をたらしながら近寄ってくるんですがまったく何を言っているのかわからなくて困ったことがありました。それ以外の時は目さえ合わせてくれませんでした。ヒドイ監督です(笑)」と冗談まじりに本作をふりかえった。
また、映画初出演にして初主演となった小谷は「約10日間の撮影日数でしたが、一日一日は普通に生活している時よりもすごく濃くて、新鮮な思いで楽しい経験ができました。監督とは撮影中、あまりコミュニケーションとれなかったんですが、エネルギッシュな方で、不二子さんもおっしゃってましたけど、目で訴えられたり(笑)。でも色々助けられたので「ありがとうと」この場で言わせていただきます。」
(綿野)

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□作品紹介
『肌の隙間 』