『ゲロッパ』のヒットも記憶に新しい井筒和幸監督の最新作が今年も東京国際映画祭に登場!前作『ゲロッパ』のタイトルがジェームズ・ブラウンの名曲「セックスマシーン」からきていることからも分かるように、常に音楽を重要な要素として作品に盛り込んできた監督が今回選んだのは、ザ・フォーク・クルセダースの伝説的名曲「イムジン河」である。また脚本を書いたのは同バンドのヒット曲「帰ってきたヨッパライ」を作詞した名編集者でありライターの松山猛氏。音楽を担当したのは同バンドメンバーの加藤和彦氏、とまさに「イムジン河」を源流として生まれた作品となっている。

 人と人との繋がりを見つめつづけてきた井筒監督が今回挑んだテーマは在日韓国人と日本人、それぞれが不条理な社会の論理に巻き込まれながらも大人の一歩を踏み出す、という青春群像劇である。1968年の京都を舞台に、高校2年生・松山康介(塩谷舜)と朝鮮学校の番町(高岡蒼佑)、そして同じく朝鮮学校の美少女キョンジャ(沢尻エリカ)を中心に熱い若者たちがぶつかりあう感動の青春ドラマにして井筒監督の最高傑作がここに届いた。

 釜山国際映画祭にも参加してきたという『パッチギ!』チームから監督、塩谷舜さん、高岡蒼佑さん、沢尻エリカさんがジャパンプレミア上映の会場となったシアターコクーンに登壇し舞台挨拶が行われた。

監督は、「まず、新潟で大変な震災が起こったという中で祭りというのは恥ずかしいです。」と新潟中越地震の被災者へのお見舞いの挨拶の後、「昨年は『ゲロッパ!』という大人の喜劇を撮りましたが、そのときにはすでにこの企画があったんです。こういう場で見せられることを光栄に思います。」と、心に温めてきた作品であることを披露した。
続いて主演の塩谷さんは、釜山国際映画祭へ参加したことについて聞かれると「釜山に行ったときは、周りの人が観ている中で自分の作品をみるという初めての経験だったのですが、観客の皆さんは泣いたり笑ったり、ハングル語で「何これ!」と言っていることが分かって、「つたわわっているんだなぁ。」と鳥肌が立ちました。」と、感動的かつ貴重な経験をした様子であった。
 また、ヒロインを演じた沢尻さんは「祖国を思う気持ちと恋する気持ちは比べることはできませんが、女のことは恋する生き物なのでそういう純粋な気持ちで演じました。」と微妙な乙女心を演じた難しさを語った。
そして朝鮮学校の高校生を演じた高岡さんは「監督はうそが嫌いな人なので、頭に本当のセメントをかけられて・・一日中頭がいたかったです。」と撮影秘話を暴露し、作中同様に今作品を通して様々な経験をした若い3人はジャパンプレミアを迎えとても感慨深いおももちで、その様子がとてもみずみずしく映った。

疾走する青春ムービー『パッチギ!』。社会性とエンターテイメントが絶妙に絡み合い、ヒリヒリした青春の痛みが国境を超えて駆け抜ける!

 (Y.ozawa)

□東京国際映画祭
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