昭和63年、運命の糸を手繰り寄せるかのようにして25年ぶりに再会した男と女。互いに惹かれ合い、狂おしいほどに求め合うようになる。だが、やがて男に暗い影が忍び寄り、女は男が遺した言葉と感触だけを想いながら生きていく……。古都金沢・勝山・鶴来、そして北陸の美しい風景と切ないトランペットの音色が、二人の激しく濃密な恋愛にさらに奥行きを与えている。
 谷崎潤一郎賞を受賞した高樹のぶ子氏のベストセラー小説『透光の樹』がついに映画化し、29日都内で完成披露試写会が行われた。舞台挨拶に姿を現したのは、6年ぶりにメガホンをとった根岸吉太郎監督、主演の秋吉久美子さん、永島敏行さん、高橋昌也さん。
 まず秋吉さんが「2003年は怒濤の日々で、東京・赤坂、夏の奥多摩、金沢、山形、石川、鶴来、千葉でのロケを経て、やっとこの場所に辿り着けました。これは究極の純愛。日本の芸能界の中心で愛は叫べなくても(笑)この純愛映画に出られて幸せ。山崎千桐役をやり通せてよかった。恋愛の話は、自分の中を流れる映画だと思います」と挨拶。永島さんは「久々の映画です。今までにやったことのない役でした。石川で1年を通して四季を撮るというのは大変だった。スタッフと共に自信をもって作りました」と述べた。山崎千桐(秋吉さん)の痴呆にかかってしまっている父役を演じた高橋さんは「寝たきりのボケ老人ではないという姿を見せにきました」と来場者の笑いを誘った。そして根岸監督が「シナリオは5年前に出来上がっていました。やっとここに来ることができました。どうぞ楽しんでご覧になってください」と述べた。 
 と、ここで特別ゲスト・津川雅彦さんが大きな花束を持って登場!「根岸を尊敬している。天才だ。友人として、今日は涙がでるほど嬉しい。よく完成させてくれた」と喜びを語った。
(村松美和)

■『透光の樹』は、2004年秋、シネカノン有楽町ほか全国ロードショー!

□作品紹介
透光の樹