クロージング上映作品は、今回の映画祭で審査員もつとめている巨匠・森崎東監督の最新作『ニワトリはハダシだ』だ。知的障害を持った少年が、ひょんなことから検察汚職の裏帳簿を発見してしまったことから、大騒動がまきおこる様を、善悪を問わずヴァイタリティ溢れる登場人物達を通し、活き活きと描いた人間喜劇だ。上映前の舞台挨拶では、森崎監督に加え、森崎監督の代表作『生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言』(85)でもコンビを組んだ原田芳雄、倍賞美津子、そして若手実力派加瀬亮、本作がデビュー作となる肘井美佳と、ベテラン&フレッシュな本作の出演者陣が登場し、森崎ワールドの魅力を語り作品への期待を盛り上げる。
 そして上映後、そんな期待に違わぬ作品を堪能した観客の前に、矍鑠とした様子で現れた森崎監督が登場し、和やかな雰囲気の中でQ&Aが行われた。
 今回の作品は、前述の『生きてるうち〜』を見て、森崎監督との仕事をしたいと思い、本作でプロデューサーをつとめた志摩氏との念願が叶っての作品とのこと。それ故に、作品の舞台は志摩氏の故郷でもある舞鶴で撮影され、『生きてるうち〜』の原田&倍賞コンビが実現した。また警察署の撮影は、フィルム・コミッションの協力で御当地の警察署を使用して行われた「ただ私は(劇中で)、警察の悪口を言ってますんで気になって署長さんに、台本を読んだか訊ねたところ、読んでないけどそのうち読む、作品も出来たら見ますって…後から問題になるんじゃないかとびびったんですが、未だに言ってこないんで大丈夫らしいです(笑)」(森崎監督)。さらに、高等検察庁の内部事件には実は実際にモデルがあって、これからその裁判がはじまるという、ちょっと驚きのネタも披露された。
 劇中で登場する養護施設とそこの子供、職員も全て実際の物・人が使われている。また、主人公の知的障害を持った少年は、子役志望の少年が演じている。「オーディションで友だちについてやってきた彼が、笑顔が印象的で目にとまったんです。特別の演技指導はいたしません。知的障害者の方の動きや考えは僕には想像できませんから、一切演出はしませんでした」(森崎監督)。その真摯な姿勢が、画面から心地よいリアリティを与えているのだろう。
 因みにタイトルの「ニワトリはハダシだ」の意味は、ことわざ辞典等によれば「当たり前のことだ」というよな意味だとか。「あまりにも当たり前な答えなんで、ちょっと違うんじゃないかなと私は思います。このたとえを聞いた人が、自分なりに考え、受け止めて、いろいろな教訓を言えばいいんだと思います」(森崎監督)。皆さんは、このタイトルの意味をどう考えるか?『ニワトリはハダシだ』は2004年の公開が予定されているので、その際には、作品を楽しみつつこの言葉の意味を考えてみよう。
(宮田晴夫)

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第4回東京フィルメックス
ニワトリはハダシだ

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ニワトリはハダシだ