東京国際映画祭2003:コンペティション部門『ウィニング チケット』ティーチ・イン開催!
平凡な男がサッカーくじで大金を手にしたが、偶然にもその時革命が勃発してしまい…という『ウィニング・チケット』は、1956年に起きたハンガリー革命時の実話にインスパイアされた悲喜劇だ。11月7日のオーチャードホールでの上映には、主演女優のマリアン・サライと監督の一人イレーシュ・サボーがティーチインに登場した。
本作はイレーシュ・サボー監督とシャンドール・カルドシュ監督の共同作品。撮影監督として高名なカルドシュ監督が映像面、サボー監督が演技指導等の面という役割分担で撮影はスタートしたが、その過程で役割を交換することも多々あり、これによって互いにこれまでの仕事で満ち足りなさを感じていた部分を解消しつつ、スムーズな撮影ができたそうだ。
ハンガリー革命という歴史的事実を背景にしつつも、本作では従来と異なる側面からこの出来事をとらえようと試みた。「大金を手にした主人公も、また革命が起きたハンガリーの国民にも56年10月23日は素晴らしい日だったのですが、しかしその夢は最後に無残に打ち砕かれるという点でも共通だったんです。主人公は大金を手にし、素晴らしい生活を夢見、またハンガリー国民もソ連の支配下から逃れられると希望をもったのですが、実際にはいずれの希望も打ち砕かれてしまいました。我々の作品のメッセージは、個人にとって大金を掴むことが本当の幸福の元ではないし、国民にとって革命が幸せの基本にあるのではない。そうしたものなしに、人々は幸せになっていくべきなんだということなんです」(サボー監督)。そうした要素を描くために用いられた、スターリン像や戦車の砲身などのシンボルの使い方も印象深い作品だ。
(宮田晴夫)
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