『攻殻機動隊』などで内外を問わず高い評価を得ている士郎正宗のデビュー作『アップルシード』が、劇場用フル3DCGアニメとして新たに蘇える。監督は『バブルガムクライシス』等を手掛け、本作が劇場用監督デビュー作となる荒牧伸志がつとめ、また荒牧が卓球場面のストーリーボードを担当した『ピンポン』の監督でもあり、デジタル技術に関してトップクラスのクリエイターとしても知られる曽利文彦がプロデュースを担当と、気心のあった二人が驚愕の最新映像革命を起すべく現在製作が快調に進行中だ。
 この作品は、先に書いたとおりジャパニメーションとしては、初のフル3DCG作であり、リアルで情感溢れるキャラクターを生み出すための手法として、実際の人間の演技をそのままアニメのキャラクターに反映させるモーション・キャプチャーが大々的に取上げられている。そして、注目の本作のヒロイン、デュナン・ナッツの動きは、実力派若手女優の三輪明日美が担当しているのだ。アニメ・ファン、映画ファンどちらにとっても、大ニュースだ!
 3月下旬、都内スタジオにて行われている本作のモーション・キャプチャーの現場を見学することができた。スタジオ自体は格別に広いわけではなく、周囲に舞台道具や背景画などがあるわけでもない。そんななか、三輪をはじめモーション・キャプチャー・アクターの面々は、白い玉状のマーカーをつけた黒いタイツ状の姿で、真剣な表情でリハーサルを重ね、本番に臨んでいく。演じるにあたっての立ち位置はカメラワーク等によってチョクチョク代わり、荒牧監督、曽利プロデューサーがその都度指示を出していく。正直、傍で見ていても、どのような絵柄が出来上がるのか想像がつき難いのだが、クリエイターの頭の中に完全に出来上がった構図に基づき、アクター達がそれを的確に受け止め演じているのは感じられる。なお、本作の世界観を構築していき、全体の演出をするのは荒牧監督だが、モーション・キャプチャーでの演技部分では、実写作品の監督経験のある曽利プロデューサーがヘルプしているそうだ。以下、この日の収録を終えた3人からのコメントを紹介しよう。

Q.モーションキャプチャーについてお聞かせください
荒牧伸志(監督)——素材的に使用している部分も含めれば、全体の6割をはるかに越えていますね。モーション・キャプチャーしたものは、使えればそのままストレートに使いますし、さらに別で作っている背景を合成して作っていきます。撮影時にもモニターで見れますので、リアルタイムでCGに手直しをいれて、映画に反映させることもできます。

Q.今回の企画のきっかけは?また三輪さんを起用された理由は?
曽利文彦(プロデュース)——元々は荒牧と、テレビ用フルCGの企画を3年かけて練ってきたんですけど、それで積み重ねてきたテクノロジーを使って先に劇場映画を作ろうということになったんです。三輪さんとは『ピンポン』でご一緒したんですが、現場での動きが一番素直。で一緒にやり易い人なので頼んで見ました。

Q.三輪さんに、モーション・キャプチャーの感想と通常の演技との違いを教えてください
三輪明日美(デュナン役)——モーション・キャプチャーは、ゲーム『バイオハザード0』で少しだけやったことがありましたが、こんなに長いのは初めてです。このとおり、何も無いところで演るので、目では何も判らないじゃないですか。全部頭の中で創造してみせるんですね。それと、実際の面では、台詞を噛んでもすすめてしまって大丈夫と言う(笑)。その分、むしろ実際の感情の流れを重視できるんです。その他は、特に変わらないですね。

Q.最後にメッセージをお願いします
荒牧——きっかけとしては自分で始めた企画ではないのですが、士郎正宗さんは同世代で大好きな作家です。劇場用作品は初監督ですが、いい作品にしたいと思っています。
三輪——正直、どのように仕上がるのか想像がつかないのですが、その分私自身も楽しみにしてるって気持ちの方が多いです。
曽利——アニメには日本で完成された2Dアニメの世界があり、それとは別に3Dアニメもありますが、現状こちらの分野では日本は遅れてしまっている。日本らしい3Dアニメをやってみたいという意味では、現段階では入口に辿り着いたばかりだと思いますが、礎を立ち上げるチャレンジだと思っています。是非、楽しみにしてください。

なお、『アップルシード』は2004年春全国劇場公開予定!
(宮田晴夫)

□作品紹介
アップルシード