中学生の珠子のもとに、ある日突然現れたおじいちゃん=グランパは、13年の刑を終えたムショがえりだった!『時をかける少女』など多くの作品が映画化されている筒井康隆の心温まる現代のおとぎ話を、東陽一監督が映画化した話題作『わたしのグランパ』がついに完成し、3月6日、丸の内東映にて完成披露試写会が開催された。当日は、寒さが厳しかったにもかかわらず、劇場は立ち見も出る盛況ぶりですごい熱気。それもそのはず、この日はグランパ役で12年ぶりにアクションにも挑んだ大御所、菅原文太をはじめ、孫娘を演じる本作がデビュー作となるフレッシュな石原さとみ、そして原作の筒井氏、東監督がそろって舞台挨拶を行うのだから。それぞれのコメントを紹介しよう。

菅原文太(五代謙三役)——こんな時節柄、よう御運びいただいて有難うございました。最近は飛騨の山奥にいるもんですから、映画の依頼は電話とかFAXとかで入ってくるんですが、わが社のマネージャー氏…女房なんですが…と、「どうします、やめますか?」「そうだなぁ…」というやりとりで、やめることが多いのです。「原作とシナリオが送ってきてますよ、読んでみますか?」って言われて、読まなきゃよかったんだけど、筒井さんの原作の冒頭で、囹圄という田舎の蔵の奥にしまってある錆付いた日本刀のような言葉に、懐かしい言葉がでてきたなと思い、広辞苑を引いたところ罪のある人を幽閉するところとか書いてあって、吉田松蔭やジャン・バル・ジャンを思い出しましたが、その言葉をキーワードにこの物語は始まっていくんです。これが、筒井さんの罠の一つなんです。それで、主人公が13年の刑を終え出所してくるシーンに進んでいくんですけど、これが罠の二つ目。そして70歳と書いてあって、立ち回りが出てくるのが三つ目の罠。それで三つだけかと思ったら、監督から手紙が来ていてこの役はあんたしかいないと書いてある。根がバカなもんだから、その四つの罠に引っかかった猪みたいなもので、足利市に1箇月カンヅメになって、東監督にこき使われました。自分はまだ、観てないのでどんな風に仕上がったのか…でも撮影中、東監督が現場を盛んに動き回って、私と同じような年なんですが、屋根の上まで登って「用意スタート!」って。大体監督が、わさわさ動き回っている時の映画は出来がいいんです。面白い映画に出来上がっているかもしれません。どうぞ、ごゆっくり観てください。

石原さとみ(五代珠子役)——昨年8月末に、ホリプロ・タレント・スカウト・キャラバンでグランプリをいただき、この『わたしのグランパ』がデビュー作映画となります。初めて台本をいただいた時には、まだ芸名がついてなくて、五代珠子の下が空欄だったんですけど、芸名をいただき石原さとみというシールを貼った時に、私この役やるんだ…と実感が湧いてきたのを覚えています。映画の撮影に入る前日とかは、眠れないほど緊張したんですが、菅原文太さんに珠ちゃんと呼んでいただき、すごく安心したのを覚えています。とても楽しい日々でした。

筒井康隆(原作)——私が『時をかける少女』を書いてから40年経ちまして、『七瀬』シリーズを書いてからも30年、『文学部只野教授』を書いてから15年、そして今『わたしのグランパ』が映画化されたことによって、新しい傑作になろうとしています。皆さんは、その立会人です。「自分は『時をかける少女』を封切りの時に観た」と、自慢する人がいます。皆さんも、これから30年後、40年後に「わしは『グランパ』の試写会に行ったと、息子さんや御孫さんに自慢なさるかもしれません。最もそのころ私は、とっくに人間の形はしておりませんけど。私たちの願いは、この新しい作品を光り輝かせていただきたいということです。石原さとみも光り輝いております。菅原文太さんは、先ほどから焼酎を大分飲んで酔っ払っています。兎に角、これを傑作にしていただくのは、皆さんの声と力です。宜しくお願いします。

東陽一(監督)——菅原さんの独演会風喋りを聞いていて、何を話すか忘れてしまったんですけど、こういう場所で監督が言う台詞には決り文句があって、「素晴らしい原作をいただき、素晴らしい俳優達にめぐまれ、とても楽しい仕事ができました。ありがとうございます」って言うのですけど、そういうのはつまらないので自分の言葉で言いますが、素晴らしい原作をもらって、素晴らしい俳優さんと一緒に仕事をして、とても幸せでございました。観所は最後のローリング・タイトルにありますから、見ないと損しますので、最後までごゆっくりご覧ください。

 なんといっても場をさらうのは、菅原だ。焼酎の件を筒井に暴露(笑)されても、臆することなく、ひょうひょうと今回の撮影のことや、昔の現場にことを話す語り草が実に味があり、劇中のゴダケン役と重なるご本人の姿に会場は温かくわいていた。
 なお、『わたしのグランパ』は2003年4月5日より丸の内東映会館、新宿東映パラス2他にて全国ロードショー!
(宮田晴夫)

□作品紹介
わたしのグランパ