目まぐるしく、忙しなく流れる時の中で生きてきた日本の企業人が、イランという国でいまだにたゆたうように流れていく時間を体感したことから、本来あるべき自分自身の姿に気づいていく…。初の日本=イラン合作作品となる『旅の途中で−FARDA−』がこの程完成。イスラム教の承命日である10月5日(土)、国際交流基金フォーラムにて、イラン・イスラム共和国の大使館主催による、本作の親善プレミア試写会が開催され、ドタール演奏の第一人者であり劇中では言葉の通じぬ井沢に自分を取り戻させるオスマンを演じ、この度来日したオスマン・ムハマドパラストさんをはじめ、スタッフ・キャストがゲストとして登壇し、舞台挨拶が行われた。

中山節夫監督——この映画は昨年の7月の末に、私と(古山正)撮影監督と開さんの3人でイランに行きました。後は全部イランの方達に、スタッフの協力をしていただきました。映画は世界言語だと言いますが、映画を作るスタッフも言葉は全然わかりませんけど、日本で撮ってるのと全然変わることなく撮影はスムーズに進みました。昨年のニューヨークの事件の10日前に帰国し、その後11月に行き仕上げも全てイランでやった映画です。この映画は、そういうイランの方々の協力によって出来上がったということと、映画のスタッフだけではなく、大使や商社の方などこの作品を撮らなければ交わることがなかったであろう方々の、温かいもてなしの中で映画をつくれれたと思います。また、これからも撮らせていただきたい為にも言っておりますが(笑)、この作品を取り上げてもらった日活に感謝したいと思います。

宍戸開さん(井沢貴之役)——今まで生きてきて、僕は俳優としても、自分自身としても、心に鍵をかけて生きてしまったかなという気がします。そしてこの作品に出会い、イランという国に行って初めて、その心の鍵の扉を開くことが出来たと思います。皆さんも、今日作品をご覧になっていただくわけですけど、その中で自分の扉を思い浮かべて、鍵をあけるなり、心に残るようにそんな気持ちで見てもらいたいなと思っています。ありきたりですが、中村社長をはじめスタッフの方々やオスマンさんに、あらためてお礼を言いたい心境ですね。本当に僕としては、映画俳優として第2の人生が始まったと言う、大きくステップ・アップした作品になったので、最後までごゆっくりご覧ください。

オスマン・ムハマドパラストさん(オスマン役)——私はプロデューサーのショザヌリさんの友人で、それがきっかけでこの合作映画に出させてもらいましたが、この映画に出て言葉は判らなかったのですが、しばらく時が経つと目と目を合わせれば理解が出来るようになったので、なんの問題もなく仕事が出来、本当に嬉しいです。今回ご招待いただき日本に来て、とても優しい日本人の皆さんと出会えたことを喜んでおります。皆さんにお礼を申し上げます。

 挨拶に続きオスマンさんは、「時間が5分しかないと言われて、とても悲しいね。少なすぎるよ」と苦笑しつつ、美しくも力強いドタールの演奏を披露。作中でも丹念に描かれている独特の時の流れを体感させるその音色に、客席はすっかり魅了させられた。

 なお、『旅の途中で−FARDA−』は2002年10月12日より、シネ・リーブル池袋ほか、全国主要都市にてロードショー公開!。
(宮田晴夫)

□作品紹介
旅の途中で−FARDA−