第10回フランス映画際横浜中日の最終上映作品は、2001年ベネチア映画祭でも話題を集めた絢爛たるオペラ大作『トスカ』だ。遅めの上映にも関わらず、客席はオペラファン、映画ファンの熱気に包まれ、その中には中田横浜市長の姿も。「私にとって自分の子供のような作品」と語るユニフランス会長…と言うより本作のプロデューサーであるダニエル会長がと作品について語ったのに続き、現在世界的に最も人気の高い歌姫アンジェラ・ゲオルギューさん、ブノワ・ジャコ監督が紹介されると、場内は割れんばかりの拍手と声援に包まれ、マイクを通じた言葉も聞き取れないほどだ。
 「アリガトウ、これほど多くの方々がオペラ映画を観に来てくれていることを知り、感動してます。私達が生まれるはるか前に生まれたオペラが、2002年にも映画化されていることを誇らしく思います」(ゲオルギューさん)「今から観ていただく作品は、フィルムの長さと同じだけ音楽があります。ごゆっくりご覧ください」(ジャコ監督)と挨拶したのに続き、いよいよ作品の上映へ!
 たゆまなく壮麗に流れる楽曲にあわせて、観客の間を空気のうねりが流れる。感動と陶酔の126分が過ぎ、灯りのついた舞台に二人が立つと場内は再び盛大な拍手に包まれた。映画祭恒例のティーチ・インでは、オペラについてそして映画についてそれぞれの分野からの質疑が行われた。舞台と映画二つの形でのオペラを演じられたゲオルギューさん、スタジオ録音も含めそれぞれでの苦労点はまた別だと語る。例えば2時間で上演されるオペラと、録音をした後、6週間を要する映画それぞれで同じ感情を持ちつづけることは並大抵ではないことなのだ。また、フランス・オペラ作品の映画化へ期待を寄せるファンの問いかけに、既に進行中の『ロミオとジュリエット』、再度ジャコ監督と組む来年予定の新作のことなどが報告された。
 本作を選ばれた理由を訊ねられたジャコ監督だが、企画自体はダニエル会長から依頼されたもの。勿論、二つ返事で映画化を受けることにしたそうだ。そして会長はと言えば、「それは、アンジェラ・ゲオルギューです」と実に単純明快なのだ。
 劇場で上演されるオペラでは表現し得ないクローズアップの手法による感情表現がオペラファンへ、そして日頃中々チケットが取りずらいなどで馴染みが薄いオペラの魅力を映画ファンへとそれぞれに訴えて喝采を浴びた本作。会場に来れなかった方は、生まれついての歌姫の魅力を映画館で堪能して欲しい。

なお、『トスカ』はシブヤ・シネマソサエティにて、今秋より独占ロードショー公開!。
(宮田晴夫)

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フランス映画祭横浜2002

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トスカ