長野県で1年間にわたる長期撮影を敢行し、うつろいゆく四季を背景にした人と人とのふれあいを通し、現代社会の中で忘れられた生きることの感動を描く小泉堯史監督の『阿弥陀堂だより』がこのたび完成。6月3日にル・テアトル銀座にて完成披露試写会が開催され、小泉監督をはじめとするゲスト陣が舞台に立ち、その心境を語った。

小泉堯史監督 ——この映画は僕が説明すること特にありません。時間がひじょうにゆっくり流れておりますので、加古さんの音楽に耳を傾けながら、また撮影をした飯山の風景や四季のうつろいを感じながら見ていただければと思います。よろしくお願いします。

加古隆さん(音楽) ——台本を最初に読んだのは昨年の春だったんですが、読んだ後清々しい風が体を吹き抜けたような爽やかな気分が残りました。台本を読んだ時点でも、僕が演奏するピアノの音が映画にあうと思いましたし、僕が感じた爽やかな風のような音楽を書きたいと思いました。実際に風を表現するために、珍しい楽器も使いましたし、メイン・テーマには「風のワルツ」という曲名をつけました。春夏秋冬1年を通した美しい映像がふんだんに出てきますので、そうした映像を見ながら作曲をするのは嬉しい喜びでした。

小西真奈美さん(小百合役) ——私にとってこの作品は、本当に素敵な出会いを沢山与えてくれた作品でした。完成した作品を見て、頭ではなく心で感じて泣いてしまいました。皆さんもゆっくりご鑑賞ください。よろしくお願いします。

樋口可南子さん(上田美智子役) ——去年の今ごろは春のロケが終わったんだなぁと思っていました。1年かける映画というのは、私も今までで初めての経験で、本当に美しい自然と本当に優しい人たちとの間で撮影できるということは、こんなに贅沢なことなのかと、1年間長野県に通うのが楽しみで、本当に幸せでした。私の役はパニック障害に冒された女医の役ですが、役を通して個人的に素の自分が本当に癒され、人は生きていく上でこういうことが大事だし、こういう自然の中で生きていくことは本当に気持ちがいいんだという、本当に忘れていた一番大事なものを教わったような気がするし、完成したものをみても何故だか涙が出てくる、そういうことを気づかせてくれる映画じゃないかなと思います。

寺尾聰さん(上田孝夫) ——前作から小泉監督の映画で共通して演じている男の姿ですけど、優しい男はそのバックボーンには強さがないといけない。今回の上田孝夫という役は、深く静かに優しく妻を見守っているという男性です。最初にそれを考えたときに、その人物が弱くなってしまう自分がいて、そうではなく強さが1本通っているから優しさがあるんだと、前作同様難しいテーマにぶつかっていきましたが、最終的には一番近くに一番いい見本、小泉さんがそういうタイプだったんです。静かで優しく深い監督のもとで、1年間持続していくことが出来たと思っています。誠意を持って、自信を持って皆でつくりあげました。決してドンパチある派手な映画ではありませんが、皆が楽しんでもらえる映画だと思ってます。

なお、『阿弥陀堂だより』は日々谷みゆき座ほか全国東宝洋画系にて、今秋ロードショー公開!。
(宮田晴夫)

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阿弥陀堂だより

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