その容赦無い人間描写とアナーキーな作風にカルト的な人気を誇るスペイン映画界の寵児、アレックス・デ・ラ・イグレシア監督の新作『みんなのしあわせ』が、いよいよ2002年新春よりロードショー公開される。古ぼけたアパートを舞台に、ひょんなことから大金を手にしてしまったオバサンと、その大金を狙っていた住人たちが、欲の皮を突っ張らせながらぬきさしならない関係を繰り広げるブラック・コメディで、スペイン本国ではカルトの範疇に収まらない国民的な大ヒットを記録した話題作だ。
 年明けのロードショー公開に先立ち12月20日には東京国際フォーラム映像ホールにて、試写会が開催された。この日は、スペシャルゲストとして実は本作のキーパーソンである“ふとっちょのダース・ベイダー”ことチャーリーを演じたエドゥアルド・アントゥニョ氏が作品上映後に来場し舞台挨拶が行われた。
 ベーダー卿のマスクにマントを羽織り、ライトセーバーを構えて観客の前に立ったアントゥニョ氏。まずは挨拶代わりとばかりに、その巨体で華麗?なライトセーバーさばきを披露し、場内からはやんやと歓声が贈られる。
 「ありがとうございます。こうして皆さんと一緒にいれて、とても幸せです」。マスクを外し、人なつっこい笑顔を浮かべて挨拶をするアントゥニョ氏。この作品が日本での出演作品初公開となるが、作品を満足して観終えたばかりの観客の反応もあたたかい。
 本作は先に書いた通り、個性的なイグレシア監督の最新作。きっつい(からこそ癖になる)作品を連発するイグレシア監督だが、アントゥニョ氏にとっての監督の印象は?「彼は非常に自信に満ちた監督で、その自身を私にも与えてくれました。今回の映画にも現れてると思うけど、楽しい現場でした」。さて、アントゥニョ氏の演じたチャーリーは、本作では異彩を放つキャラクターだ。「『スター・ウォーズ』の大ファンで、他のハゲタカのような住人達と一線を引くためにバカなふりをしてるんです。通常のヒーローとは一味違うが素晴らしい役で、やりがいがあると思ったんです」。その言葉は、映画を観終われば実に納得、デブで頭髪も薄いヲタクなキャラだが、作品中唯一の良心ともいうべき役を熱演しているのだ。因みに、『スター・ウォーズ』は子供の頃、最初の作品を初日に列に並んで観に行ったそうだ。
 会場からの質疑も受け付けられ、一つ一つ丁寧に答えるアントゥニョ氏。質問は「クライマックスで出てくるモニュメントは?」「スペイン本国での評判は?」と言った作品に関するものから、「映画のようにスポーツくじを当てたことはないのですか?」といった、映画に絡んだアントゥニョ氏自身に関することまで。因みにスポーツくじに関しては、「一度も無いです。運に関してはついてなくて、払う方ばかりでしたね(笑)」とのことだ。また、独特の映画のタッチに、本作のスペイン映画での位置付けを尋ねるファンもあったが、「アレックスの映画というジャンルです」と流石にシンプルでよくわかった答えのアントゥニョ氏だった。
 最後にアントゥニョ氏は、「今回が初来日です。日本に来てみて気づいた事は、スペインとでは文化の違いもありますが、沢山の共通点があることも感じました。飛行機で14時間の旅をしてきたわけですが、とても気持ちよく過ごさせていただきました。ありがとうございます」とメッセージを語り舞台挨拶は幕を閉じた。

なお、『みんなのしあわせ』は2002年1月12日より、シブヤ・シネマ・ソサエティ、横浜西口名画座にてロードショー公開される。また@nifty CINEMA TOPICS ONLINEでは、エドゥアルド・アントゥニョ氏の単独インタビューも近日掲載予定です。そちらも、ご期待ください。

□作品紹介
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=2597
(宮田晴夫)