上映ラインナップ発表時には作品名は明かされない東京フィルメックス恒例のお楽しみ上映、フィルム・サプライズ。今年選ばれた作品は、韓国製インディーズ・ムービー『ブルース・リーを探して』だ。ソウルで起きる連続死事件。その死体の傍らには、必ずブルース・リーの映像があった…という説明から連想する映画と、実際の本作の印象は全く異なる。記憶についての意識的な言及やスチール処理された部分などは、クリス・マルケルの『ラ・ジュテ』を思わせ、アート感覚とインディーズ感覚が不可思議にマッチングした作品だ。上映後には、本作がデビュー作となるカン・ノン監督を舞台に迎えてティーチ・インが開催された。

Q.カタログの中でブルース・リーというのが、西洋が見た東洋のステレオタイプであり、それが監督にとって武器になると書かれていましたが、その部分をもう少し詳しくお願いします。
——それは、恐らく私が以前受けたインタビューを基にした文章だと思いますが、ちょっと私の意図とは違うように文章化されたようです。好む好まざるに関わらず、以前のソウルは非常に閉鎖的な都市でした。が、現在は非常に変化の激しい都市になっていて、肌の色の違う人や違う言語を話す人々がすんでいます。すれ違った相手が違う存在であることに、驚くこともよくあります。その反面、いかにして自分のものを守っていくか悩んでいる人も沢山います。全く違う存在の人は、追い立てようと思う人もいます。そして、もしブルース・リーが生きていたら、彼はまさに東洋の顔ですのでハリウッドに行った場合、ハリウッドのスタッフは彼を見て非常に驚くでしょう。そしてリー本人も、あちらでは戸惑ったり驚いたりすると思います。そういった、違うものが出会った時の驚きを、象徴としてのブルース・リーを通して描いてみたいと思ったのです。
Q.映画の中に実在のバンド、クライングッツが実名で出ていますが、彼らの起用の意図を教えてください。

——私が映画にしたい構想があり、彼らがそれにぴったりあうということで起用することになりました。韓国の音楽業界はメジャー・システムの中で活躍している人たちのほかに、今回のクライングナッツのようにマイナーな所で活躍している人がいます。彼らはほとんどテレビに出ませんから、あまり顔は知られていませんが、出演料が1万ウォンでも、呼んでくれればどこにでも行ってライヴを行うような人たちです。私は彼らのライヴを観に行き、非常にエネルギーに満ちたステージであることを感じ、エスプリなども私の映画の構造とぴったりあったので、出演していただくことになったのです。

Q.韓国ではどのような形で公開されたのでしょうか
——私の今回の作品は本当にインディーズ製作なんですが、インディ・ストーリーという所が公開に尽力してくれて、バンドもインディーズと全てにおいてインディーズの頭文字がついてますよ。公開は来年の2月にソンジェ・アート・センターというインディーズ系作品を上映する予定です。そして私に向けてインディーズ系の人からの問い合わせが多いので、私の家族は私がインドで映画を撮ったと感違いしたようです(笑)。

Q.若い人達の描き方などが日本の人たちと似ている感じがしたんですが、国家等に対するクリティカルなエネルギーなどはどうなっているのでしょうか
——私は幼い頃から、愛国心を持つようにという教育を沢山受けてきました。その頃は、軍事政権からの大統領で軍事独裁体制が布かれていましたが、それに対してかってはデモを行っていた世代がありました。そうした世代も、彼らなりの愛国心はあったと思いますが、どちらかというとそれは国粋主義に近い形の愛国心だったと思います。当時デモをしていた人たちが今政治的な権力を持つようになっていて、その人たちの世代は、私達の世代とはまた違うと思います。

□第2回東京フィルメックス
http://www.filmex.net/
(宮田晴夫)