一針一針にこめられたのはその命への思い

レンブラントやフェルメールといったオランダ絵画を彷彿とさせる映像の素晴らしさ、繊細な刺繍そのものを思わせるきめ細やかな心の動きをとらえた演出が高く評価され、2004年のカンヌ映画祭批評家週間にてグランプリを受賞した『クレールの刺繍』。
 本日は、長編デビュー作が、2004年カンヌ映画祭批評家週間グランプリを受賞という快挙を遂げた新鋭監督エレオノール・フォーシェさんとこれが映画初主演作となるクレール役のローラ・ネマルクさんを招いて完成披露試写会及び、記者会見が行われた。エレオノール監督は昨年『クレールの刺繍』がフランス映画祭で上映された時から二回目の日本来日だそうで「昨年フランス映画祭で来日しました。主演のローラと共に世界中をまわって本作の紹介をして来ましたが、またこうして日本に来れて嬉しく思います。」、ローラも「あちこちまわって日本へ帰ってきた感じ!皆さんがこの作品を気に入ってくれる事を願っています。」と笑顔で語った。
その後のティーチ・インでは本作を鑑賞した人たちから次々と質問が飛び出し、本作についての関心のほどが窺われた。

Q.この映画を撮ったキッカケは?
監督:「最初、若い女性(クレール)と少し年をとった女性(メリキアン夫人)の関係を描きたかったんです。そして、クレールは若さ、メリキアン夫人は経験とそれぞれ生き生きとした生命力を交差させたく、しかもそれが針を使った仕事で描ければと思いました。その仕事を通じて言葉を交わさなくても心の交流が出来るということを考えたのです。それは私の仕事とも似ている部分があり、例えばトップモデルがすごく綺麗な服を着て歩く、でもその華やかな舞台裏では沢山の人たちが動いている。映画の世界でも同じでエンドロールでも分かると思いますが、沢山の人が参加しているのです。そういった人たちに焦点を当ててみたかったのです。」

Q.17才で妊娠という難しいヒロインの役どころでしたがどんな意気込みで演じましたか?
ローラ:「私は妊娠した事はありませんが、自分が彼女ならこうかな?と思ったように演じました。」

Q.映画の中ではクラシック音楽が終始流れていましたが、ED曲では曲調がガラリと変わっていた理由は?
監督:「映画の中のクラシック音楽は外部と断ち切られたヒロインの内面を表していて、でもラストではクレールが内に秘めていたものを周りに話せるようになってきたという点でそれを表現するようにロックを使用する事にしました。」

Q.監督に!家庭と仕事の両立について。ローラに!学校と仕事の両立について。
監督:「確かに大変難しいです(笑)。撮影期間が6ヶ月もあったんですが、恵まれているのは5才の娘が段々と1人で何でもやるようになって手がかからなくなった事と、娘のパパででもあり私の旦那様そして彼の両親が協力的で助けてくれる事です。」
ローラ:「私も大変難しいです。でも学校を続けるという事を決めたのは自分なのでバランスとらなくちゃ!といった感じです。」

Q.最後にメッセージを!
監督:「女性が多く来る作品だと思いますが、子に対する責任の重さや難しさを描いた作品なので男女幅広く観てもらいたいですね。」
ローラ:「皆さんに観てもらいたいですが、映画のプロの方にもぜひ観て頂きたいです。それは外国でもこのお仕事で活躍できるように頑張りたいと思っているからです!(笑)」

監督は「今、次回作の準備をしているんですがなかなか1日が大変ですね(笑)」と笑い、ローラも「学校と仕事の両立頑張ります!」と力強い発言をするなど頼もしい女性お二人に出会えた事に感激した。

(菅野奈緒美)

※2005年晩夏、bunkamuraル・シネマほかにてロードショー!

■作品紹介
『クレールの刺繍 』