日本映画の独立系プロダクションにより組織されている日本映画製作者協会が、もっとも将来性のある監督に与える新人賞で、今年で八回目を数える新藤兼人賞が決定し、12月9日シネアミューズにて授賞式が開催された。
 この賞は現在日本映画界の第1線で活躍する7名の現役プロデューサーからなる審査員が、「この監督と一緒に組んで仕事をしたい、映画を作らせてみたい」という観点で選ぶという点で、他の新人賞とは一線を画するもの。授賞式では本賞に名前をいただいた日本のインディペンデント映画の先駆者であり、91歳となった現在も精力的に作品を発表し続けている(新作『ふくろう』が新春公開予定)新藤兼人監督がプレゼンターを務め、「映画製作のメインは独立プロダクションによるものとなってきたが、それでも独立プロによる映画製作は簡単ではない。そのための地固めをして行くのが、新人監督の方々です」とコメントし、自らデザインしたトロフィーと副賞を受賞監督に授与した。受賞監督・作品は以下のとおり。

金賞(副賞:100万円)
李相日監督『BORDER LINE』

銀賞(副賞:賞金10万円)
竹下昌男監督『ジャンプ』

 金賞受賞の李相日監督(29歳)は、日本映画学校の卒業制作作品として製作された『青〜chong〜』が「PFFアワード2000」にてグランプリを受賞したほか、内外の映画祭で高い評価を集めた。長篇デビュー作となる『BORDER LINE』は、社会の枠からはみ出した性別も職業も年齢も異なる5人と社会との関係を描いたロードムービー。李監督は、「予算がないなか2週間の撮影を不眠不休で一緒に作ってくれたスタッフ、キャストに報告できるいい結果になった。この賞はよくやったというものではなく、次も頑張れよというものだと思うので、これからも撮り続けていきたいです」と力強くコメント。
 また銀賞受賞の竹下昌男監督4(3歳)は、これまで『リボルバー』『はるかノスタルジー』等多くの作品に助監督として参加。第1回監督作品となった『ジャンプ』は、佐藤正午の原作小説を、ミステリーの形式を取りながら主人公の成長を描く新しいタイプの青春映画だ。竹下監督は「最初の作品ということで撮影が終わって半年ですが、なかなか自分の中で消化できませんでした。遅いデビューとなりましたが、嬉しいです」と喜びを語った。
(宮田晴夫)

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